自分探しが止まらない (ソフトバンク新書 64): 速水 健朗: 本
「自分探しのたびに出る」と称して現役引退、流浪の旅ビジネスを続けるナカタや須藤元気に始まり、「あいのり」のヒット、「外こもり」など、若者の「自分探し」の構造を網羅した本。
ヒット商品の背景には、この「自分探し」や「自己啓発」のモチーフが隠れているという指摘は興味深い。
「あいのり」の登場人物たちが口をそろえて言う「○○はありのままの自分を認めてくれる」「自分の気持ちに嘘をつきたくないから、告白をする」といった発言に象徴されるような自己承認欲求には、“本当の自分探し”症候群が潜んでいる。そしてこれが多くの若者の共感を呼んでヒットした、など。
あるいは人気ブロガーの梅田望夫の説く「Googleが作る新しい世界」式の言説に潜む、シリコンバレーのニューエイジャー達の終末思想、「ハルマゲドン2.0としての梅田望夫」。
あとは世代論としても面白かった。
『ねるとん』的な80年代を生きた、現在40〜50代の上司と、『あいのり』的な現代の若者との会話で、
「おまえ、彼女と食事するときにはどこへ連れて行くんだ」
「デニーズとか、ですかねぇ」
「何やってんだお前!? フラれるぞ!」
この世代にとっては、「デートと言ったらドライブして夜景の見えるちょっとイカシたレストランにでも連れて行かないと、女に見切りをつけられる」というという先入観があるのだが、現代の価値観から見るとそんなバブリーな行動はコントでしかなく、むしろ「かっこ悪い」のであった。
★★★
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