工場で派遣労働者として働く30歳の独身女性がおりなす、ワーキングプア物語。物語とは言うものの、登場人物も道具立ても舞台設定も、どこまでも日常的で、戦いも殺人もロマンスも発生しない。ということは僕にとって退屈な部類に入る小説ではあるんだけど、こぎれいにまとまっていて何となくおもしろみもあった。例えて言うなら、まさにポトスの茎をコップに挿して育てるような。
戦いも恋愛もない小説を読んで面白いと思えるくらいには僕も大人になったのかも知れないし、就職氷河期モロかぶりの主人公(≠作者)の年齢や題材が、単純に今の僕に身近な物だったからかも知れない。
しかし総じて退屈なことに代わりはなく、村上龍の言う「繰り上げ当選」というのが、(本人には厳しいだろうけど)妥当なセンなのかな、と思った。